2026年4月7日火曜日

早朝のRevelation ーゴールポストを動かす —

問題

機械式時計の電子制御において、頑固な定常誤差に直面した。時計は常に+1.5秒/日で進み続ける。ゼンマイが解けるにつれて振幅が下がり、等時性(アイソクロニズム)により歩度が正方向にずれる。これは物理現象であり、制御アルゴリズムでは解消できなかった。
注入エネルギーを増やしても、デューティ比を調整しても、歩度は+1.5秒/日に張り付いたまま動かない。制御系のインテグレータは限界まで出力を上げたが、2マイクロ秒のピエゾパルスではゼンマイのエネルギーに太刀打ちできなかった。

発想

制御の目標値はゼロ秒/日 — これは当然の前提だった。しかし、もし目標値そのものを動かしたらどうか。
我々のシステムは、CPUが生成したT/2間隔でパルス対を注入し、振動子はこのT/2に同期する。T/2こそが時計の「正しい周期」を定義する基準信号である。
ならば、T/2を3マイクロ秒だけ長くすればよい。 166,667μs → 166,670μs。たった3マイクロ秒。
これにより、時計は-1.5秒/日のペースに同期する。物理的な+1.5の偏りと、基準信号の-1.5が相殺し、実効的な歩度はゼロに近づく。

解決

時計は自分が何秒/日で進んでいるか知らない。ただ与えられたT/2に従うだけだ。基準を3マイクロ秒ずらせば、時計にとっての「正しい周期」が変わる。制御系が解けなかった定常誤差を、基準点の移動で吸収した。
力で押すのではなく、座標系を動かす。物理と戦うのではない。
333ミリ秒の振動周期に対して3マイクロ秒 — 0.001%未満の変更で、何時間も解消できなかった定常誤差が消える。時に最も効果的な解決策は、問題を解くことではなく、問題の定義を変えることにある。

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